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POEM
死
辛かったあの頃の思い出がたまに脳裏をかすむ
私は若かった
私は余りにも純粋で前方しか見れない幼稚な人間だった
しかしそれが何だというのだ
図太く利口な大人達は私の桃色の薄皮を引っ掻いた
何の覆いもなく神経が集まっている薄皮を引っ掻いた
私はそれが何ゆえ気持ちの悪い情なのかさえ知らなかった
毒の上に鮮やかに塗られた宝石の惨めな輝きに
幼い私は引き寄せられて全てを知りたいと望んだ
探究心は我が身を絶望へと導いた
愛と悪とは背中合わせになっており
しかし周りの人々は見事に真ん中という縁をつま先で歩いていた
すぐ隣にある愛の領地に足を踏み入れることはなかった
いつの間にか幼い私が悪の子であると評価されるようになった
それでも私は愛を憎むことはなかった
愛という言葉をも憎むことはなかった
悪の標識となっている愛の看板さえも愛した
そして深い同情の念と共に肩を抱き合い涙をこぼした
幼稚さから少し抜け出た私は他の世界を知りたいと願うようになった
旅に出ることを決意した
私は第二の絶望へと向かった
私は多くの人が優しい仮面をかぶった魔物であることを知った
邪悪に満ちた泥沼しかそこにはなかった
私はどうして美しさを求めるのか
求める気持ちが高まれば高まるほど
全てはうらはらに私の期待を土足で平気で裏切る
ならば私はどうして美しさを求めるのか
私は邪悪を愛そうと試みた
泥沼の悪臭をヘドロを顔に塗りたくり口にいれようとした
するとどういう訳か以前にも増して探究心が顔を出し
深い愛を望むところを源とする私の悲しい怒りが全身に湧き上がるのである
行き場をなくした私は
目的も目標もなくした私は
目隠しのまま手探りで毒蛇の住みかである洞窟をさまよわねばならない
抵抗力というものももはや敵となり
不安の重石がゆっくりと寄りかかってくるのを感じている
私の肉体も感覚も罪深いものであり
なににすがればいいものか
死にすがりたい
私は「死」にすがりたい
「死」を慈しみ「死」に口づけし「死」と交わりを持ちたい
浅はかで白々しく薄情な
そんな私を誰が求めるものか
生きるということがそれだけで裏切りならば私は「死」を望む
そして誰も私の「死」を悲しんでくれるな
「死」を選んだ私を嘲笑してくれ蔑んでくれ
その独特の目つきで私の死体を眺め口に出さずに心の中でこう呟いてくれ
「私は一人の人間を死に追いやることができた優秀な人材だ。
優越感が私に水々しさを与えてくれている。
艶やかさが衰たえぬ今日のうちに隣町で派手な宴を開こうではないか」と
そして涙を他人に分かるように上手に流してくれ
その涙は私が用意しておこう